昔、生理痛はなかった?

PMS(月経前症候群)を含め生理痛を自覚する女性の割合は20歳前後では8割程度との調査報告もあり、生理年齢のほとんどの女性が生理に伴う何らかの痛みや不快感を自覚するようです。

ところで世界の先進国と言われる国々でさえ、つい6,70年前までは一人の女性が生涯生む子供の数は4,5人が普通だったことはご承知の通りです。女性は妊娠から産後授乳期まで13ヶ月~20ヶ月程度は生理が起こらないため仮に5人の子供が2年毎に生まれた場合結果として7-9年程度の間は連続してほとんど生理痛なしの状態が続くことになります。

さて現代では栄養充足や医療を含めた社会環境の変化が要因となり初経の低年齢化と閉経年齢の高年齢化が進み、さらに乳児死亡率の低下や女性の社会進出や経済力向上等の劇的環境変化により、女性の生涯出産数は日本で1.4人程度の状況となりました。これらの要因により女性が生涯経験する生理の回数が昔に比べ圧倒的に増えているのす。 ある医療機関の試算ではその格差は9-10倍だそうです。

そもそも生理痛をおこす原因は子宮から剥離脱落した子宮内膜を体外に排出するために子宮筋を収縮させる物質の一つプロスタグランジンの過度な作用によるものと言われています。

では何故排卵後受精・着床に備えせっかく肥厚した子宮内膜は無受精の都度脱落するのでしょうか? 排卵後卵子の寿命は1.5日程度といわれます。その間に受精しないと受精卵にならずに退縮してしまうのですが、同時に子宮内膜の肥厚(成長)を促進するエストロジェンやプロジェステロン(黄体ホルモン)の分泌も低下してしまい結果子宮内膜の栄養源が絶たれ劣化脱落してしまいます。こうなるのは新しい子宮内膜の成長に備えるためで、絶えず子宮は新鮮な状態で受精卵の着床体制を整えようとしています。

生理はゴリラ、チンパンジー等の霊長類にもみられるようですが人類にとっては春期、秋期などの特定発情期に関係なく年中妊娠可能にしようと進化を遂げてきた結果月1回程度に生理機能が発達し排卵、妊娠の機会を増やしてきたとも言えるそうです。このような変化をもたらしたのは一夫一婦制が定着してきたことに関係するのではないかとの見解もあるそうです。

ここではり・きゅう(鍼灸)がなぜ生理痛に適用するかというと、プロスタグランジン作用によって子宮が収縮し子宮平滑筋自体が虚血状態になってしまうと痛みをますます助長させるのだそうですが、鍼灸は子宮を含めた骨盤内臓器の血行を良くする作用があり、子宮筋の過度な収縮も緩和する効果が期待できるためです。