中国式お灸?
最近お電話で ”そちらでは中国式お灸をやってますか?” という問い合わせを受けました。
「中国式の鍼」というのは我々も時々言ったり、聞いたりすることがあり、和式とは違った特徴がありますが、「中国式お灸」 というのは聞いたことが無いので、”当方で行うお灸は通常日本で行われている方法です” とお答えした。(当方の勉強不足だと思いました)
早速インターネットで「中国式灸」を検索してみたところ、千年灸や棒灸など日頃日本のどこの鍼灸院でも使用しているお灸であることが分かりました。
かつてお灸は熱くて火傷する、といった古典的なイメージとは違うことを強調する為、敢て中国式と一部で称したものと思われます。
お灸の方法は50年程前までは中国・日本に限らず、もぐさ(艾)を直接患部皮膚に乗せて、燃え尽きる前、熱さが急激に増して来たと同時に除去する方法が一般的でした。これを「直接灸」と称していますが、かつて一般家庭でも家族向けに実施されたお灸では、熱くなり始めた艾を取り除くタイミングが遅れ、軽い火傷になってしまうことが多くあったようです。
因みにもぐさの原料はヨモギの葉の裏に生えている細かい白い毛を集めた物です。 艾そのものには皮膚から体内に浸透する成分や、臭いに鎮静効果があります。また燃焼による熱さで免疫反応を引き出すことが科学的研究でも分かっています。
お灸で火傷を防ぐため、古くからいろんな方法が開発されました。中国においては艾を円柱状(長さ20㎝、太さ直径2㎝程)に紙で包んだ「棒灸」と称する方法がありました。患部皮膚に直接触れず、近づけて数秒維持し、患者が熱く感じてきたら離す方法です。
日本においても、ビワの葉灸、味噌灸、塩灸など、これらの素材をガーゼなどに乗せ、その上に灸を置いて熱する、「隔物灸」と称する方法が開発されています。戦後では千年灸の様にセラミックの土台にお灸を載せて燃焼する方法が一般の人でも使用し易いということで市販もされています。
これらをまとめて「間接灸」と称していますが、現代ではどこの鍼灸院でも極力火傷のリスクを軽減するため、直接皮膚にお灸を載せて燃焼する方法をとることは疣・胼胝(イボ・タコ)などを除去する目的で使用する以外は、ほとんど間接灸での治療と思います。
我々鍼灸師の間では棒灸や間接灸は日常的に使用しているので、あえて中国式と言ったりしていませんが、この度のお問い合わせはたぶん棒灸を指していたのではないかと、後から理解できた次第です。因みにお灸は需要が限られているため、製造者も数少なく国産品は非常に高価です。
棒灸などはほぼ100%台湾産、中国産なのでそのことからも中国式と言われたのかもしれません。