脳の話
タイトル「脳と性と能力」著者カトリーヌ・ヴィダル、翻訳金子ゆき子を読みました。著者は精神科医でフランスパスツール研究所所長とのこと、名前から女性と思われますが。
本文は相当旨く翻訳されているはずなのだが、日本人からみるとやはり欧米語の特徴である一文章の中に多くの説明句が含まれ、時々回りくどさを感じるのと、眠くなってしまうのは、私の読解力の無さから感じるものなのかもしれない。
それはさておき、この本の一番のポイントは脳の働きに関しMRI画像などの進歩でここ20年程の間に画期的に多くの新事実が発見されるにつれ、まるで脳の働きがほぼ解明できてきたと思いがちになるのだが、実際はまだまだ分からないことだらけだ、というものです。
例として男女間に先天的、遺伝的な脳の機能の違いがあるのでは、との仮説に対し、かつて1万年前の人類の祖先に近いクリマニョン人以降は脳の性差による適正からから男が狩猟に出かけ、女は家を守り、家事をまかなうという想像図などが正に事実の如く我々は思い込んでいる。しかしながら、当時本当にそのような性差による役割分担があったことを明確に示す遺跡や資料は見つかっているわけではないのだ。
ひょっとしたら女も男と一緒に狩猟に出ていたのかもしれない。ある学者の一面的な研究から提唱されたイメージが、いつのまにかそれが常識であるが如く思いこんでしまっていると指摘しています。人間の脳は先天的な違いよりも育った環境により発達の仕方に個性が出てくると言っています。
そういえば昔子供の頃多くの場面で火星人というとタコのような図柄が描かれていたために火星人はタコの様な存在と思いこんでいたように思います。でも今だそれを裏付けるような新発見はありません。
世の中には長い間ずっと事実として思いこんでいたことが実は想像でしかなかったということが多々ありそうですね。