外因の日本と中国の違い

古代中国で体系化されたとされる東洋医学では病気の原因を大きく外因、内因、不内外因に分けます。そのうち外因とは主に風・暑・湿・燥・寒の四季の営みを指し、自然界が病気の原因の一要素と考えました。体に及ぼす外的影響を分析したと言う点では科学として当時最先端であったろうと思われますが、その根本に中華思想が反映されていないだろうか?

本来人は完成された小宇宙でありこれを漢民族に例える。自然界の営みを邪とし、人と相対するものとする。漢民族が中心であり正とする一方周辺を取り囲む異民族を邪とする伝統的思考です。

漢代に体系化されたと考えられる東洋医学の基礎はその後日本の大和時代に仏教ともに伝わり遣隋使により政策的に導入されたと見做されています。異民族との摩擦が少なく古来より豊かな農作物の収穫をもたらす自然環境に恵まれた日本では自然と共に生きる自然崇拝があり、中国から伝わった自然界を邪と捉える考え方をそもままには受け止め難く、導入した古代中国医学も日本の自然・文化にあったように進化したように思います。

従って鍼灸の世界でも極端に言えば中国では実したものを取り除く瀉法に重点がおかれ、日本では虚したものを足す補法に注力して発展してきたように考えられます。