腹八分目
以前、「空腹のすすめ」と題したブログを書きましたが、今回はこの続篇です。
”腹八分目”が良いとは江戸時代(1712年)に貝原益軒が発表した「養生訓」の中で述べられ世に広まったとされています。因みに益軒は83歳で養生訓を発表し、85歳で生涯を閉じた当時としてはスーパー長寿じいさんだったようです。
以前、空腹感を覚えてから食事をするのが良いと書きましたが、”腹八分目”は食事が始まってからのことです。もう少し食べたいな、まだ入るな、と感じたところで食事を終えるのが良いと言っています。
これをその後の生理学の発展から解釈すると、自立神経の中枢である視床下部にある満腹中枢が働くのは食後20分頃と言われています。現代の食事では食べ始めて20分後は大方の方は食事を終えてしまっている時間と思います。食事中は腹8分目と感じている場合でも、その後胃で消化・吸収される20分後に視床下部に血中濃度として伝わるブドウ糖などの濃度が丁度いい満腹感を覚えるようです。
一方腹いっぱい10分目まで食べてしまうと、食後20分には120%になって、ちょっと食べ過ぎたかな、と感じてしまうようです。
益軒は当時、現代生理学を知っていた由はなく、経験則から腹8分目が生理学的に丁度良いと割り出したんでしょうね。鋭い観察力をもっていたんでしょう。
でも20分経たない食事中に、なぜまだ入るとか、もう一杯だと感じるのだろうか。実は胃袋そのものにもセンサーがあって脳に伝えているようです。多分ブドウ糖等のような化学的なものではなく、胃が空っぽ時に比べ食事によってどの程度拡張したか物理的な要素も反応に加わるのではないでしょうか。
更には胃直腸反射というのもあって、胃に一定の食物が入ると便意をもようしてくることも確認されているようです。
人の体が化学的刺激や反応だけでなく、物理的刺激も反応に重要な働きをするところが、物理的刺激である鍼治療の効果の裏付けにもなるのでしょう。