未病と病気 その2
前回”未病”という言い方(概念)が古代からあったのか?と、書きましたが未病という文字は古代中国医学の原典とされる「皇帝内経」(こうていだいけい)に出てくるようです。その内容は”未だ病まざる”という状態を漢文(古代中国語)や多分現代中国語でも”未病”と表現されるということです。
因みに”未病”が出てくる古典文の内容は”(本人に自覚がなくても)病の予兆を見抜き治すのが一番いい医者だ”という意味の文中です。
一方現在一般に使用され始めた”未病”は養命酒のコマーシャルが火付け役ではと考えますが、”未病”という概念名詞があって一つの病気として使用されているようです。
その定義は、
日本未病研究学会では「健康状態の範囲であるが病気に著しく近い身体又は心の状態」
日本未病システム学会では、「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」
としています。
つまり古代中国の古典医学書で書かれた”未病”と現代我々がイメージする”未病”は同じ漢字表記でもその使われ方が違っているものの、未病の意味するところはどちらも病気にならぬよう養生が大事ということか。 因みに江戸時代の貝原益軒が”養生訓”で未病を名詞的に初めて使用したとされ、健康管理法を述べてます。 極論すると病気にならぬよう養生することが最大の治療法ということか。禅問答のようにも思えるが。
健康状態の範囲であるのかどうかの判断は医療検査を含め通常医師が行いますが、そこで異常が見当たらないのに自覚症状がある”未病”には現代医学とは別の角度から生命を眺め治療を行う鍼灸が一つのツールだと考えます。
但し各種検査で正常値とされる数値は個々人の体質の違いまで考慮されているものでは無く大多数がこの範囲であれば異常なしとした基準値です。 つまり個人の体質によっては正常範囲の数値であっても基準値から外れることも有り得ます。かつて高脂血症の検査では総コレステロールを測っていましたが最近
これを構成するHDLと,LDLの相関性を重視するように変わってきました。要は悪玉コレステロールと善玉コレステロールのバランスが保たれていれば総コレステロールがこれまでの基準以上でも異常性は低いとの診断をするようになってきました。
体には自律神経のようにバランスをとろうとする生理作用があります。自然治癒力とも言えます。漢方、はり灸等の東洋医術の根本的な発想はこのバランスを整えることにあります。未病とはこのバランスがどちらかに大きく傾きかけてきた兆候を探ることにあります。